R(リチェルカーレ2018):この質問は私たちがお招きした音楽家に必ずすることにしているのですが、

リコーダーとどのように出会ってどのようにお稽古を始められたのですか?

 

C(カリーリョ ):12歳の時に、素晴らしいリコーダー演奏を初めて聴いたのです。

その瞬間、美しくて純粋な音の虜になってしまって。この素晴らしい楽器の演奏方法を習うしかない、と思いました。

 

R:ご両親が楽器をしていたり、プロの演奏家だった、というようなことがありましたか。

 

C:両親は楽器をしません。家庭に音楽的な背景は無かったです。

 

 

R:プロのリコーダー演奏家になろうと決心したのはいつでしたか。

 

C:13歳でレッスンを始めてすぐに、自分はプロの演奏家になるのではないかという感じがしました。

 

 

R:13歳でスタートされたのですね。音楽というと3−4歳から始める早期教育のイメージを持っている人も多いと思うのですが?

 

C:もう少し早く始めることが多いですし、早く始めるに越したことはないです。でも、自分は、それより遅い年齢で、リコーダとの恋に落ちてしまったのです。誰にでも希望はあるものだなぁと思います。

 

R:それで、ご両親を説得してレッスンを始められたのですね?

 

C:どうしてもリコーダーを習いたかったのですが、実は両親からのサポートは受けていません。子供の聖歌隊にいた時に、この子は音楽の才能があるのではないかと自分を見出してくれた大人がいて、それで奨学金を得ることが出来ました。自分がプロの演奏家になれたのは奨学金があったからだと思います。

 

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N(西垣):もし、小学生が学校でリコーダーを始めていて、さらに興味を持った場合、どんな曲や楽譜をお勧めしますか?

 

C(カリーリョ ):曲は単純な短いメヌエットなどから始めればよいと思います。大抵の学校ではポルトガルでもそうですが、ジャーマン運指なのですよね?

 

N:はい。ほとんどの小学校はジャーマンだと思います。

 

C:バロック運指の楽器が必要と思います。

 

N:一番の違い、ジャーマン運指の問題点は何ですか?

 

C:音程の正確さが大きいです。

 

N:バロック運指なら2~3千円のプラスチック管の楽器でもよいですか?

 

C:私はあまりプラスチック管に賛成しません。なかなか温まらないですし、音色もニュートラル過ぎます。早い段階で木の楽器の扱いにも慣れる必要もあります。

 

N:初心者にはどういうメーカーを勧めていますか?

 

C:最近は初心者に教える機会が少なくなってしまったのですが、ヤマハの木管の楽器を買ってもらってました。ポルトガルで買うと日本よりも高いのですが、品質が安定していると思います。他のメーカーでもいくつか良い楽器があります。

 

N:ご自分の楽器は特定の楽器製作家の方に作ってもらうのですか?

 

C:はい。色々と調べたり、人の楽器を借りたりして、気になる製作家がみつかればアトリエ(工房)にいって試奏します。

 

N:大きく分けて円柱管のルネサンスタイプと、円錐管のバロックタイプがあると思いますが、最初に始めるのはどちらがよいですか?

 

C:ルネサンスタイプは低音も太い音が出て、高音も魅力的でよいのですが、安定性や色々な曲が吹けるという意味ではバロックタイプの方がよいと思います。

 

N:フルートのようなキーのついた楽器をいくつかお持ちですが、どういう役割がありますか?

 

C:高い音域のためにあります。普通のトラディショナルな楽器だと、管の底を足でふさいだりする特殊な運指で高い音を出すのですが、キーがあればそれがキーで簡単にできるようになります。

 

N:ああ、あのフラミンゴみたいに吹いている姿ですね。

 

C:はい。特にシューベルトのアルペジオーネソナタを最初に吹いたときはキーのついた楽器をもっていなかったので、大変でした。楽章間で楽器を持ち替えたりもしました。

 

N:リコーダーでアルペジオーネソナタを吹くのは珍しい気がしますが、レパートリーとしてあるのですか?

 

 

C:他の人が吹いているのは聞いたことがないので、多分珍しいと思います。

 

N:リコーダーのジョイント部分がコルクの楽器と糸の楽器がありますが、何か違いはありますか?

C:はい。コルクの楽器は温度変化などで楽器が動いた(膨張など)ときにはじけて切れてしまったり、隙間が開き過ぎてしまうことがあります。その点、糸を巻いている楽器だと、そういった問題が少ないですし、巻き足したりすることで微調整も簡単にできます。

 

N:弾く曲の音域や調に応じて、楽器を持ち替えていますが、楽譜はどのようになっていますか?移調楽器のようになっていて、同じ指使いで演奏できるようにしていますか?

C:そうしているときもあれば、楽譜を読み替えて移調しながら演奏していることもあります。どの楽器に持ち替えても同じ楽譜で演奏することができます。移調譜があった方が楽な場合もときどきありますけどね。

 

N:そういうときは、頭の中ではどのDo, Re, Mi...が聞こえていますか?実音ですか?

C:絶対音感を持っていないので、結構適当です。